手で考え、足で思う
d0105218_1747370.jpg昨年末、一通の手紙が届きました。
いつもコメントを頂いているsouuさまからの手紙。
中には展覧会のチケットが2枚入っていました。
『関西代表作家展』という書道の展覧会の特別入場券で、
特別陳列として「河井寛次郎の書」を展示するというものでした。
どうやら僕が寛次郎のことに注目していることを知って送ってくださったものらしいのです。
souuさまとは、白川先生にご縁のある方だということで、友達を通じて紹介してもらった間柄で、まさか河井寛次郎のことでお手紙を頂けるとは思ってもみないことでした。

多くの現代作家の作品が展示されている中、その会場の一番奥のスペースに寛次郎の特別展示はありました。
目についたのはやはりポスターにもなっていた『手考足思』という書と陶の作品。
手で考え、足で思う。
寛次郎らしいこの言葉に心打たれると同時に、僕はこの言葉に聞き覚えがあることを思い出していました。
帰宅するなり開いた寛次郎の随筆集。
そこにはやはり『手考足思』という題名のこんな散文がありました。



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私は私を形でしゃべる 土でしゃべる 火でしゃべる
木や石や鉄などでもしゃべる
形はじっとしている唄 飛んでいながらじっとしている鳥
そういう私をしゃべりたい
こんなおしゃべりがあなたに通ずるならば
それはそのままあなたのものだ
その時私はあなたに私の席をゆずる
あなたの中の私 私の中のあなた


(冒頭部分)
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造形することの意味、
表現することの本質を、
寛次郎はいつもドキッとするような言葉で伝えてくれます。

考えること、思うことが、手や足、肉体を通じて、物質を通じて形になり、
それがどこへ繋がるのか?

人と繋がり、心と繋がり、摂理と繋がる。
いつか世界と混然となるような寛次郎の世界観が僕は好きです。

『手考足思』は以下このように続きます。




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私はどんなもののなかにもいる
立ち止まってその声をきく
こんなものの中にもいたのか
あんなものの中にもいたのか

あなたは私のしたい事をしてくれた
あなたはあなたでありながら それでそのまま私であった
あなたのこさえたものを
私がしたと言ったならあなたは怒るかも知れぬ
でも私のしたい事をあなたではたされたのだから仕方がない

あなたは一体誰ですか
そういう私も誰でしょう
道ですれちがったあなたと私


(途中抜粋)
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昨年の奈良引越にはじまり、僕の生活は今大きな大きな変化の最中にあります。
幾人かの人との出会い。
写真をはじめたことや、楽器を手放したこと。
デザインに対する考え方の変容。
すべては有機的な繋がりから発生したことです。
寛次郎との出会いもそうでした。
いや、そういう変化の中にあったからこそ聞く事の出来た寛次郎の言葉なのかもしれません。

いま心の中にある言葉は「ありがとう」でいっぱいです。
まだ僕は何を形づくったわけでもなく、何をやりとげたわけでもないので、本当はこの言葉を口にするタイミングにはありません。
でも、この寛次郎の言わんとしたことが「わかる」というだけで、僕は無性にうれしいのです。
そのことをわからせてくれた人に僕は心から伝えたい。

ありがとうと。

そして、あらためてこんな機会を与えてくださったsouuさまに感謝申し上げます。


河井寛次郎の『手考足思』は最後をこう締めくくっています。



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あれはあれで あれ
これはこれで これ
言葉なんかはしぼりかす

あれは何ですか あれはあれです あなたのあれです
あれはこうだと言ったなら
それは私のものであなたのものではなくなる

過去が咲いている今
未来の蕾で一杯な今

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そう。言葉なんかはしぼりかす。
さあ、写真撮ろ!
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by chii-take | 2008-01-13 18:11 | Comments(2)
Commented by souu at 2008-01-15 17:10 x
過去が咲いている今
未来の蕾で一杯な今
良い言葉ですね。やっぱりちいたけさんならではのblogになりましたね。
きっと良いのを書いて下さると思っていました。
でも、お身体は大丈夫ですか?無理をして会場へ行かれなければと気になっていました。
次の情報です。2月の第1~第4火曜日の4回 NHKで「私のこだわり人物伝」が放送されます。午後10:25~:50ですが白川先生の登場です。
Commented by ちいたけ at 2008-01-16 22:15 x
>souuさま
確かに、年明け直後はけっこう焦ってました。大丈夫かなって。
でもばっちり会期中に体調も回復して元気に見に行く事ができました。

実は恥ずかしながら告白したいことがあります。
頂いたお手紙の文章なんですが、実はほとんどが達筆過ぎて僕には読めませんでした。なんとも恥ずかしいかぎりです。
これは困ったと大量の汗を噴き出しているときに、「どれ、かしてみ!」とお手紙を奪っていったヨメがすらすら〜っと読んだときには菩薩様を見るような思いでした。(実はうちのヨメは国文学科卒なのです)
そんなところにも身近な人が繋いでくれた人との関わりがあったわけです。
ヨメが読んでくれたsouuさまのお手紙を見ながら、人間って不思議だなあと思いました。

さて、さらに嬉しい情報をありがとうございます。その番組に白川先生の映像が含まれているなら、僕にとって動く白川先生をはじめて目にすることになります。非常に楽しみです。
重ね重ね、本当にありがとうございます。
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