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若草山と平城宮跡の狭間で
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前の日記にも書いたけれど、僕の新しい職場は奈良平城宮跡のすぐそばにあります。

だからよく晴れたお昼どきなんかには、仕事の日でもこんな感じにピクニック気分が味わえたりするのです。
前の職場には社員食堂があって、いわゆる社食なるものがあったのでそれを食べていたんですが、
今の職場にはそれがありません。
見かねたヨメが毎日お弁当を作ってくれるようになりました。
手づくりの弁当と、澄み渡った青空と、かんかん照りのお日様、そして一面の草っ原。
お昼どきに得られる空間としては最高のものと言えるのではないでしょうか。
お昼休みなるとカメラと弁当を抱えていずこかに消え去る新入社員を先輩方がどのような目で見ているのかは知りませんが…。

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お天道様が真上にあるときに写真を撮るのは難しいと本は教えてくれます。
前からよくお昼休みに抜け出してはカメラを構えていたのでそのことはよくわかっているのですが、
一日のうちで自由になる時間なんて限られているので、ついついお昼にカメラを持ち出しては困ったなあと肩をすくめてしまいます。

日を遮る木陰さえわずかなここでは、どんなに工夫してものっぺりのっぺりの草っ原です。
ああ、だめだだめだと、石畳の上に寝そべってみたら、あら眩しいお天道様。
思わず手をかざして日を遮ると、

手のひらを太陽に すかしてみれば 真っ赤に流れる 僕の血潮♪

なんて歌を思い出してみたり…。
見覚えのあるビジュアルに思わずカシャ!
こんな写真を友達が撮っていたのを思いだしました。
真似はいけませんね。

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GWはどこにも行きませんでした。
想定外に無職の期間が長かったので懐具合が芳しくなく、今年は我慢しようと夫婦で引きこもり。
ときどき散歩に出かけては平城京をうろうろ、若草山をうろうろ。
この二つのポイントの間だけで日々の生活がこと足りてしまうのが恐ろしいです。

webをのぞいてみれば、友達や同級生たちの華々しい活躍。
かたや辺境の片田舎でのんびり初夏の緑を眺めて暮らす自分との違いはなんなのかとしばし呆然としてみたり。
でも、今の自分の生活に満足していないのかと言ったらそれはまったく違うのです。

転職以来、いろんなことがうまく回りはじめたようでなんだか怖いくらいです。
新しい職場でもすばらしい出会いがありました。
考え方がまったく一致しているわけではないのだとしても、この奈良という土地でおもしろおかしくデザインをする人に会いました。
この人と一緒に仕事ができたらなんてすばらしいだろうと思える人です。

まだ、理想の案件を抱えて自分のデザインを実践しているというにはほど遠いポジションに居ます。
でもときどきデザインの必要な仕事が今の部署に舞い込んで来ると、それを僕に宛てがってくれる上司が居て、少ない経費(=短い制作時間)の中でも、必要なデザインを見つけ出してそれを形にするチャンスが与えられているということが、こんなに幸せだと感じることはこれまでなかったのです。

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こんなにうまくいっていていいのだろうか?

まだ今の状況に完全に満足しているのではないとしても、ここには明確に想像しうる未来があり、今自分がその過程に立っているということが、いっそむせかえるくらいの濃密な空気として感じられるのです。

きっとこのまますべてが上手くいくことなんてありはしないと思うのです。

バスケットの試合でも、追いつめられつつあったチームに突如マークされていなかった選手が伏兵として現れて、鮮やかな活躍でチームメイトや観客に一瞬の希望を垣間見せることがあります。
でも突然の伏兵の出現に、チームメイトみんながその伏兵に頼ってしまうことで、逆に敗北に向って加速していくシーンをよく見かけます。
だから今僕の置かれているこの状況が…、すべてが好転しかけている今まさに目の前にあるこの状況が、僕はとても怖いのです。

一寸先は闇。ということだってあるのだろうと思うのです。

でも今は、ただ目の前にあるデザインの仕事が嬉しいのです。
集中してMacの画面に向っているときに、あれ、なんかモニターが滲んできたなと思ったら、知らずに涙ぐんでいた自分がいるのです。
才能があるとかないとか、能力があるとかないとか、そんなことはもうどうでもよくって、
僕は本当にこれを仕事にするために生まれてきたのだと(決定的に何か勘違いしているのだとしても)思える瞬間があることが無性に嬉しいのです。

ややもすれば思考が未来に飛んでしまって空恐ろしくなる今日この頃ですが、
今は何も考えずいっそ無になって今目の前にあるデザインを一つずつこなしていこうと思っています。
この土地に1枚1枚、1ページ1ページ、自分のデザインを蒔いていこうと。
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by chii-take | 2008-05-09 00:44
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