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そばにあるものほど見えないもの
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そばにあるものほど、見えなくなってしまうものがあるのかも知れません。

僕たち奈良県民なら、ほとんどが無条件で感動してしまう風景があります。
それは海。

今年のお盆。
ちいたけはヨメの実家である和歌山県の新宮で過ごしました。
4時間ほどの山越えのドライブ。
延々と車を走らせたあとに見えて来た海岸線に僕は大興奮。
ハイテンションでヨメに語りかけるも、馴染みの風景でしかないヨメにとってはそれくらいのことで騒ぐ僕がうるさくて仕方がない。

適当にあしらわれて、はいおしまい。

それでもしつこく海が見たいとくいさがっていたら、お義母さんが気をきかせて温泉の帰りに海に連れて行ってくれました。

「夜の海が見たいなんてなんとも変わった人やねえ」なんて思われて…、いや実際に言われながら到着した夜の海岸線。

真っ暗な防風林を抜けたあとにようやく開けてきた視界には別世界が広がっていました。

満月になる1日前の明るい月と満天の星空。
その光りを受けて輝く水面。
静かな波の音。

「夜の海がこんなやったなんて知らんかったねぇ」

というお義母さん。ヨメも「外国みたい」と興奮気味。

僕が嬉しかったことは、彼女らが今まで気づけなかった故郷の美しい風景を、僕が部外者だからこそ見せることができたということ。その出会いが。



こんな夜中に、月以外何も明かりのないところで一体何が写るのか?

最初は不安だったけれど、二人が感動している姿を見て、シャッターを押す前からきっといい写真が撮れると思っていました。

30秒間の長時間露光。
海岸線を動き回っていたヨメの姿は闇の中に溶け込んでしまいました。
(まだうっすら見えてますけどね)

はじめて、
僕はヨメとそのヨメの故郷を写真に収められたような気がして、なんだか嬉しかったのです。


白川先生によれば、
風景の【景】は、都市の城門の上に建つ望楼を日時計のように用いた頃の風習を表しているのだろうと推測されています。
中国最古の漢字字典「説文解字」には、ただ、
「光なり」とあるそうです。
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by chii-take | 2008-08-25 01:57
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