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ときにはそんな背中こそ 〜ある同級生についての話 その1〜
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休みの日は毎日どこへ行くにもカメラを持ち歩いています。
荷物さえ少なければ仕事の日でも。
カメラを持ちはじめてもうすぐ2年。
少しは上達したのかと言えば、いえ、まったく(笑)。
下手の横好きとはまさにこのことです。

その昔、まだ高校生だった頃にデザインを教えて頂いていた先生に、視覚表現の中で一番難しいジャンルは写真だと教えられ、そしてそれをすることは「お前には無理だ」とからかわれたことを思い出し、今さらながら実感しているところです。

なぜ無理なのかというと、決定的瞬間を捉える瞬発力が僕には絶対的に足りないと仰るのです。
まあ、生来運動音痴な僕ですから、それには納得していたのですが、
結局なんだかんだで色々あって、
無謀と知りつつも、なけなしお小遣いをはたいて一眼レフを買ってしまったのです。

それから2年。

先生の仰られていた瞬発力の欠如は本当にカメラを手にする人間にとっては致命的といえるもので、僕は日常的に決定的瞬間を見逃しながら重いカメラを手に、日々を後悔にまみれながら過ごしています。



最近一番悔しかった決定的瞬間。
それはとある同級生の背中を写さなかったことなのです。




もう一ヶ月近くも前の話になりますが、
高校の頃からバンド活動を続けていたある同級生の主催するライブイベントに行ってきたのです。
もちろんライブそのものを楽しむために行ったのだし、
数組登場するバンドの中でトリを飾るその同級生のバンドの演奏を聴くのが一番の楽しみだったのですが、僕には少し別の期待もありました。
それは彼が演奏するある有名な楽器を間近に見せてもらうことでした。
その使い込まれた名器が醸し出す“なんとも言えない良い雰囲気”をカメラに収めたかったのです。

開演前に撮影の許可をもらい、演奏中でもどんどん写真撮っていいよと言ってもらえたことで僕は安心してしまって、そのバンドが登場するイベント終盤まで写真のことはすっかり忘れてしまっていたのです。
それが決定的瞬間を逃す油断だったのですが、今さらそれに気づいても、もう後の祭りというものです。

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ライブは、とっても素敵なライブでした。

出演者の中にはどうやら10代の子もいたみたいで、その初々しいMCがなんとも心地よかったし、若い女の子が「今日は尊敬する先輩の曲を演奏します」と言って、後で登場する男の子の曲をサプライズで演奏する場面があったりで、
なんというか…、言ってみれば仲間の内輪だけで楽しんでいる感がたっぷりとあって、本来なら初めて観に行った僕のようなおっさんにとっては、あまりおもしろくない場面なのですが、僕には彼らの仲間同士の繋がりというのがとても爽やかに写って、本当に清々しく感動させてもらえるライブでした。
(あとから登場した先輩の本家本元の歌より、先に演奏した後輩の子の歌の方がよく聴こえたりするんですよね、そんな場合。それはたぶんその後輩の先輩をリスペクトする気持ちがとっても強く込められていたから…)

そんな素敵なライブイベントの中で、僕にとって最も印象深かった光景は、
(失礼な話ですが)そんな若手の清々しい演奏ではなく、
わが同級生の年季が入った貫禄の演奏でもなく(ほんまに失礼)
(ましてその手にする名器の醸し出す雰囲気などでは決してなく)…、

それは、一回り近く歳が離れた若い子たちの演奏を客席中央に陣取って聴き入っているその同級生の背中だったのです。



開演前、その同級生は今日の出演者の中には自分がギターを教えた子もいると話していました。
そうなのです。
もう30も過ぎた僕らの年代。
いわゆる後進を育てるという役割もこの社会の中で大きく担わされている役目なのですね。


まだ自分自身が成長過程にあると自覚している傍らで、後進に向けて的確なアドヴァイスを送るというのは言うほど簡単なことではありません。


僕なんかは前の会社で親しくさせてもらった後輩たちの今の状況を聞くにつけ、「ああ追い抜かれてしまったなあ」と思う日々です。


もちろんそれが悔しいわけではないのです。
ある日、ふと立ち寄ったCD屋さんで、好きなミュージシャンのCDを買おうとしたときに、その棚のすぐ下の列に、前の会社の後輩が描いたイラストのあしらわれたCDが3枚も並んでいるのを見かけて、たいそう驚いたのを覚えています。
そのときも複雑な気持ちになりましたが、やはり嬉しかったのです。

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競争相手ではないのです。
似たような目標に向って切磋琢磨する同士です。
ちょっと早く生まれたことが何なのか?
経験してる年数が何なのか?
教えてやる?
教えていただく?

そんなことではなくて、
ちょっとずつスタート地点のズレた仲間が、それぞれの担当するトラックを、それぞれのチームのバトンを受け渡ししながら走るリレーのようなものなのです。

自分が渡したバトンなのか?
これから自分が受け取るバトンなのか?
それはもう定かではないけれど、仲間の活躍するシーンを見ることは、同じトラックの対角線上にいて、全速力で走り行く仲間を見ながらドキドキしているときの気持ちによく似ています。

僕がその出番待ちの同級生の背中に見ていたのは、まさにそんなクリエイティブのトラック上で仲間の走りを見守っているアスリートのそれでした。


ときにはそんな男の背中こそ、雄弁に「ほんとうに大切なこと」について語っているものです。
僕はその背中を美しくカッコイイものだと思いながら、その光景をカメラに収めるのをすっかり見逃してしまいました。

ライブはとってもとっても長引いて、下手したら最後まで観れないかとハラハラしたけれど、終電ギリギリでなんとかすべての曲を聴き終えることができ、僕は終了と同時に会場から駆け出して駅まで走ったのだけれど、感動と共にいつまでも心に残って離れなかったのは、カメラに収め忘れた、その同級生の背中だったのです。
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こちらこちらで彼らの演奏が聴けます。

最後に業務連絡。
KGな人たちへ。またみんなでシンちゃんライブ行きましょう。
そして主役のあなた。またまた三十路が大挙して押し掛けても嫌な顔しないでね。
感想遅くなってすいませんでした。
準備中に幕の後ろから聴こえて来たグレッチの音は本気で鳥肌ものでしたよ。
本番はもう、言うに及ばず!
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by chii-take | 2008-09-26 02:34
葉は花を思い、花は葉を思う
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僕はずっと、曼珠沙華という花には葉がないのだと思っていました。

でも、数ある曼珠沙華の別名の中に「葉見ず花見ず」という名前があるように、
ただ、花が咲いている時期に葉はなく、葉が開いているときに花はないだけなのですね。

韓国ではそういう特徴からこの花を「相思華」と呼ぶのだと、今日知りました。
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by chii-take | 2008-09-22 02:26
出会いの成果
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先日、たまたまTVで「世界ウルルン滞在記」の最終回スペシャルを見ていたときに、番組の終わりで流されたこんな言葉が耳に残ってしまいました

「こんなに寂しい気持ちになるのなら、出会わなければよかった」



タレントが海外でホームステイさせてもらった先の家族の言葉なのだと思います。
別れを惜しむ辛い気持ちがとてもよく伝わってきます。
僕にはなぜだかとてもよくわかる気持ちに思えました。

出会いの喜びと別れの悲しみ。天秤にかけることなんて出来ません。
それでも、出会いに“ずっと”はありえないのに、別れはときに“ずっと”をもたらします。
誰しもそうだとは思うのですが、僕にももうずっと言葉を交わせていない人が何人もいます。
相手との出会いが大切なものであると思えば思うほど、出会わなければよかったと思うこともしばしばです。
でも出会わなければ、今の僕は僕ではなかったろうし、すべての出会いにおいて、僕は出会う前の自分よりほんの少しづつ前に向って変わってこれたと思うから、出会いを恨むのは大きな大きなお門違いなのだと知ってしまっているのです。
だから、このやり場のない気持ちを抱えて、僕はときどきひとり悶々としていたりします。

端的に言ってしまえば、淋しいのですね。


今僕は職場で自分の倍くらいの歳のベテランデザイナーさんと仕事をさせてもらっています。
先日その人と二人で取り組んだ6社競合の大きなコンペがあり、二人で作り上げたカンプを手にクライアントの元へプレゼンに行ってきました。
出来上がったカンプを二人でしげしげと眺めているときに、そのベテランさんがしみじみと言ってくれた一言があります。

「君が居てくれてよかった」

結果が出る前にそんなことを言うなんておかしいなと思ったのですが、ベテランさんにとってはカンプが出来上がった時点で、なんらかの結論は出ていたようなのです。

ある日、そのベテランさんが、「君はなぜうちの会社に来たのか?」と質問してきたので、
僕は正直に「奈良で働きたかったからです」と答えました。
最初は就職先が見つからなくて大変だったと。
ベテランさんは物珍しそうにしながらもニコニコしながら、
「見つかってよかったね」と言わっしゃるので、僕は、
「たまたま見つかった会社にあなたのような人が居たことがよかった」と言ったらば、顔をくしゃっとさせて
「おべっかはいらんねん」と。
もちろんおべっかではないのです。

この頃何かの用事で意見を聞きに行くと、二言目には、「オレはもう引退や、あとは若いもんで頑張ってや」と仰る。
もし万が一今度のコンペに買って、大きな仕事が舞い込んだら、僕はそのベテランさん言おうと決めている言葉があります。
「◯◯さん。これでまた引退が延びましたね」

半分嘘の、ほんとの気持ち。

これを言うためだけでもいい。
今度のコンペ。僕は絶対に勝たなければいけない。
今まで僕を導いてくれた多くの出会いの成果として。
今は届かないまでも、再会したときにいつでも報告できるその成果として。
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by chii-take | 2008-09-16 02:03