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出会いの成果
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先日、たまたまTVで「世界ウルルン滞在記」の最終回スペシャルを見ていたときに、番組の終わりで流されたこんな言葉が耳に残ってしまいました

「こんなに寂しい気持ちになるのなら、出会わなければよかった」



タレントが海外でホームステイさせてもらった先の家族の言葉なのだと思います。
別れを惜しむ辛い気持ちがとてもよく伝わってきます。
僕にはなぜだかとてもよくわかる気持ちに思えました。

出会いの喜びと別れの悲しみ。天秤にかけることなんて出来ません。
それでも、出会いに“ずっと”はありえないのに、別れはときに“ずっと”をもたらします。
誰しもそうだとは思うのですが、僕にももうずっと言葉を交わせていない人が何人もいます。
相手との出会いが大切なものであると思えば思うほど、出会わなければよかったと思うこともしばしばです。
でも出会わなければ、今の僕は僕ではなかったろうし、すべての出会いにおいて、僕は出会う前の自分よりほんの少しづつ前に向って変わってこれたと思うから、出会いを恨むのは大きな大きなお門違いなのだと知ってしまっているのです。
だから、このやり場のない気持ちを抱えて、僕はときどきひとり悶々としていたりします。

端的に言ってしまえば、淋しいのですね。


今僕は職場で自分の倍くらいの歳のベテランデザイナーさんと仕事をさせてもらっています。
先日その人と二人で取り組んだ6社競合の大きなコンペがあり、二人で作り上げたカンプを手にクライアントの元へプレゼンに行ってきました。
出来上がったカンプを二人でしげしげと眺めているときに、そのベテランさんがしみじみと言ってくれた一言があります。

「君が居てくれてよかった」

結果が出る前にそんなことを言うなんておかしいなと思ったのですが、ベテランさんにとってはカンプが出来上がった時点で、なんらかの結論は出ていたようなのです。

ある日、そのベテランさんが、「君はなぜうちの会社に来たのか?」と質問してきたので、
僕は正直に「奈良で働きたかったからです」と答えました。
最初は就職先が見つからなくて大変だったと。
ベテランさんは物珍しそうにしながらもニコニコしながら、
「見つかってよかったね」と言わっしゃるので、僕は、
「たまたま見つかった会社にあなたのような人が居たことがよかった」と言ったらば、顔をくしゃっとさせて
「おべっかはいらんねん」と。
もちろんおべっかではないのです。

この頃何かの用事で意見を聞きに行くと、二言目には、「オレはもう引退や、あとは若いもんで頑張ってや」と仰る。
もし万が一今度のコンペに買って、大きな仕事が舞い込んだら、僕はそのベテランさん言おうと決めている言葉があります。
「◯◯さん。これでまた引退が延びましたね」

半分嘘の、ほんとの気持ち。

これを言うためだけでもいい。
今度のコンペ。僕は絶対に勝たなければいけない。
今まで僕を導いてくれた多くの出会いの成果として。
今は届かないまでも、再会したときにいつでも報告できるその成果として。
by chii-take | 2008-09-16 02:03
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